抽象比喩の活用
難しい話を、別のイメージに置き換えるスキル
レスバトルでは、議論が抽象的になりすぎて、相手にもジャッジにも伝わりにくくなることがあります。
そんな時に使えるのが、抽象比喩の活用です。
抽象比喩とは、難しい考え方や構造を、別のわかりやすいイメージに置き換えて説明することです。
ただし、これは「具体例」とは違います。
具体例は、実際にありそうな場面を出して説明するスキルです。
抽象比喩は、構造や関係性を別のものにたとえて、理解しやすくするスキルです。
このスキルで見るポイント
このスキルでは、発言の中で、
元の議論の構造を理解しているか
その構造を別のイメージに置き換えられているか
比喩によって主張や反論がわかりやすくなっているか
が見られます。
ただかっこいい表現をするだけでは認定されにくいです。
比喩を使うことで、議論の意味がより伝わりやすくなっている必要があります。
使いどころ
相手の主張が複雑な時や、自分の反論をわかりやすく伝えたい時に使います。
たとえば、相手が、
多少の問題があっても、この制度は続けるべきだ。
と言ってきた場合、ただ「問題を放置するのはよくない」と返すよりも、比喩を使うことで伝わりやすくできます。
穴の空いたバケツに水を入れ続けるようなものです。
水を入れる努力を増やす前に、まず穴をふさがなければ、問題は解決しません。
この場合、「制度の問題を放置したまま続けること」を「穴の空いたバケツ」にたとえています。
構造が近いため、相手の主張の弱点が伝わりやすくなります。
発言例
相手がこう言ったとします。
とにかく全員に同じルールを適用するのが公平です。
この場合は、次のように返すと認定されやすくなります。
全員に同じルールを当てはめるだけでは、本当の公平とは言えないと思います。
それは、身長の違う人たちに同じ高さの踏み台を渡して、同じ景色を見ろと言うようなものです。
条件が違うなら、同じ扱いをするだけでは、かえって不公平になることがあります。
この発言では、
元の論点
全員に同じルールを適用することが公平か。
比喩
身長の違う人に同じ高さの踏み台を渡す。
比喩で示している構造
条件が違う人に同じ対応をしても、同じ結果にはならない。
が整理されています。
認定されやすいコツ
抽象比喩の活用では、比喩を出したあとに、必ず元の論点へ戻すことが大切です。
おすすめの形はこれです。
これは〇〇のようなものです。
なぜなら、△△という構造が同じだからです。
だから今回の議論でも、□□と考えるべきです。
比喩だけで終わると、何を言いたいのかわかりにくくなります。
比喩 → 共通点の説明 → 元の主張へ戻す
この流れを意識しましょう。
具体例との違い
具体例と抽象比喩は似ていますが、役割が違います。
具体例は、現実にありそうなケースを出して説明します。
たとえば、学校で全員に同じ宿題を出しても、家庭環境によってできる量が変わることがあります。
これは具体例です。
一方で、
同じ高さの踏み台を渡しても、身長が違えば見える景色は変わります。
これは比喩です。
現実のケースそのものではなく、議論の構造を別のイメージに置き換えています。
認定されにくい例
次のような発言は、抽象比喩として認定されにくくなります。
人生は旅のようなものです。
これだけでは、今回の論点とどう関係しているのかわかりません。
議論とは炎です。
かっこよさはありますが、何を説明しているのか不明です。
川の流れのように考えるべきです。
これも、どの構造が同じなのか説明されていないと、ただのポエムになりやすいです。
抽象比喩は、雰囲気を出すためのスキルではありません。
複雑な議論の構造を、別のイメージで理解しやすくするためのスキルです。
ポエムと紙一重の難しいスキル
抽象比喩の活用は、具体例と違い、意識して使うほどポエムと紙一重になるリスクがあります。
具体例は、現実にありそうな場面を出せば成立しやすいです。
しかし抽象比喩は、別のイメージに置き換えるぶん、比喩の選び方を間違えると一気に意味が伝わりにくくなります。
たとえば、
この議論は、夜明け前の空のようなものです。
と言われても、何がどう同じなのか説明されなければ、討論ではなく雰囲気だけの表現になってしまいます。
抽象比喩を使う時は、かっこいい言い回しを狙うよりも、
何と何の構造が似ているのか
その比喩で何を説明したいのか
元の論点にどう戻すのか
をはっきりさせましょう。
抽象比喩は、決まれば強力ですが、ズレるとただのポエムになります。
ロマン砲だけど、雑に使うと弱い
抽象比喩の活用は、加点が大きいロマン砲です。
うまく決まると、難しい反論を一気にわかりやすくできます。
ただし、比喩がズレていると、逆に意味不明な発言になってしまいます。
比喩を使う時は、
何と何の構造が似ているのか
その比喩で何を説明したいのか
最後に元の論点へ戻れているか
を意識しましょう。
決まれば強い。
外せばポエム。
それが抽象比喩の活用です。
